こやのかずこ作品解説

(花とゆめ時代 [後期]:1977〜'81年)

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(仮想) こやのかずこ選集 [文庫本版] 原画コレクション 未発表作品

もうすぐ春ですね/ラベンダー色の恋 花とゆめ1977年冬の増刊号、春の増刊号、全2回
コミックス未収録
 高校生になったばかりの石郷岡 (いしがおか) 久美が2人の男性の間で揺れ動く姿が描かれます。久美の気持ちに共感する女性も多いでしょうが、やっぱり自分の想いが相手にうまく伝わらないみつる君が気の毒。もっと大人になれと久美に言いたい!

タイトル内容紹介
もうすぐ春ですね
 ('77年冬の増刊号)
久美はおとなしくて優等生の美男子みつると親しくなり、土曜日の午後はいっしょに図書館で勉強するようになりますが、積極的な態度に出ないみつるに不安を抱きます。
ラベンダー色の恋
 ('77年春の増刊号)
久美とみつるは公認の仲ですが、活動的でスポーツマンの黒田が接近して、久美は少しずつ魅かれていきます。やがて黒田と交際するようになる久美。ところが互いに嫉妬し始めて…。


ガタガタファミリー 花とゆめ1978年4号〜12号、全5回
コミックス未収録

喜多方きらら、毬人、すもも、亜紀人
 ガタガタファミリーこと喜多方家は、パパと呼ばれる小説家のおかあさんと、毬人 (まりひと)、きらら、すもも、亜紀人 (あきひと) の4人兄弟からなる5人家族。おとうさんは7年前に家を出て今はいません。実はおとうさんには画家になりたいという夢があったため、おかあさんはおとうさんにその夢をかなえさせたくてわざと離婚したのでした。しかし兄弟はフランスにいるおとうさんに再会したいという思いがつのり、渡仏費用を稼ごうと奮闘努力します。そして何とかフランスに着いた時、おとうさんは南米へ旅立った後でした…。

 ストーリーは連続していますが、やはり隔号連載という形で発表されました。4話で幸運を得て突然フランスへ行けるようになります。父親はそこにはいませんでしたが、5話では再び幸運な巡りあわせが起こり…、とストーリーは急展開していきます。

 もう少しじっくり描ける内容だったと思われるのですが、担当の女性編集者の発案で始まった連載で、こやの先生自身が感情移入できず、早々に終わったそうです。ちょっと残念な作品でした。

サブタイトル内容紹介
ことのおこりは
 ('78年4号)
きららが家賃ゼロの洋館を見つけて喜多方家は引っ越ししました。その家にはちょっと薄気味悪い女性の絵が飾られていましたが、パパがそれをじっと見つめます。
まけられません
 行くまでは!!
 ('78年6号)
それが父の描いた母 (パパ) の絵だと知った兄弟は、父のいるフランスへ行く費用を稼ぐためにアルバイトを始めますが、なぜかすももが妨害して店をめちゃくちゃにします。
まぶたの父
 ('78年8号)
賞金を狙ってクイズ番組に出る毬人には、アンモニアをかぐと天才になるという特異体質がありました。ところが決勝直前に犬におしっこをかけられて…。
いざ!フランスへ…!
 ('78年10号)
すももはお金を稼ぐために押し売りまがいのことまでしてしまいます。そんな時、洋館の主人から招待を受け、一家そろって渡仏します。
すてきな変化
 ('78年12号)
1年後、白泉賞を受賞したパパがテレビの対談番組に出かけると、そこに父がいました。しかしまたもすれ違いで父はニューヨークへ去って行きました。


ダメ兄ちゃん 花とゆめ1979年1号〜23号、全12回
コミックス未収録

杉田 桃
 花とゆめ本誌の最後の連載作品です。

 杉田 柾 (まさき) は両親を亡くした大学生。うなぎ屋の2階に下宿しながら、生活費を稼ぐために日々牛丼屋でバイトをしていますが、一生懸命でまじめなのにドジばっかり。そんな時に、遠い親戚にあずけていた妹の桃が、兄を頼って上京してきます。

 生活が苦しいながらも柾はひたすらにがんばり、桃は兄とくらしながらも新しい中学で学生生活を謳歌させてもらいます。やがて2人のまじめさと心やさしさに触れた牛丼チェーン店の店長 (社長では?) に認められ、明るい将来が見えてきたところで連載は終わります (2004年はBSE問題で牛丼屋も大変ですが)。

 第1話で久しぶりに兄と再開した時の桃の表情がいいですね (右図参照)。照れながらも、うれしさを隠しきれないところがよく出ています。

 主人公は一応桃なのですが、兄の柾の方がドジぶりは激しく、しかし桃の目から見る兄はタイトルの「ダメ兄ちゃん」とはまったく異なる妹思いのやさしい兄です。ドラマチックなストーリー展開はありませんが、ほのぼのとしていて良い作品です。

サブタイトル内容紹介
兄妹再会
 ('79年1号)
親戚にあずけている桃がつらい目にあって上京して来ました。しかし手紙と違う質素な暮らしぶりを見て兄が裕福でないことを知ります。桃は黙って帰ろうとしますが…。
桃の転校
 ('79年3号)
柾は桃を有名中学に入れようとしますが大金が必要でした。サラ金や競馬場に出入りする柾ですが、桃は見栄をはろうとする柾とけんかしてしまいます。
桃のアルバイト
 ('79年5号)
桃は家計を助けたいと思い、友だちの歌子の家のケーキ屋でアルバイトを始めます。しかしそれが学校にばれて桃は先生に呼び出されてしまいます。
桃ちゃんの制服
 ('79年7号)
桃は風紀の先生から制服を早くかえるように言われます。そんな時、喫茶店で兄と会ったのを同級生に目撃され、デートをするために制服をかえないと悪いうわさを流されます。
ラブレター
 ('79年9号)
歌子とおしゃべりする桃を見つめる7組の小林。桃が帰宅すると、桃の手さげ袋の中に小林からのラブレターが入っていました。当惑する桃と複雑な表情の歌子…。
ハイキング騒動
 ('79年11号)
みんなでハイキングに行った時、柾が小林の姉を見つめているのに気づいた桃は複雑な気持ちになりました。考え込んでいるうちに桃は迷子になってしまい…。
ユーウツな雨の
('79年13号)
桃はみみずが出てくる雨の日が嫌いです。そんな雨の日、桃は車に水をかけられてびしょぬれになります。おわびにと家へ案内される桃は、その家で…。
兄妹げんか
 ('79年15号)
将来のことを考えて桃をきびしくしつけようと考える柾。もの忘れも多い桃についきつく言い過ぎてしまい、柾は翌日熱を出して寝込んでしまいます。
北海道旅行
 ('79年17号)
同級生の南雲の親戚の牧場に手伝いに行く桃たち。しかしけっこうな重労働で、さらに荷物を盗むキツネが現れます。東京で心配する柾ですが…。
10アキボタル
 ('79年19号)
桃は公園で倒れている体の弱い少年、螢を見つけます。彼はどこかの公園でなくした自分の本をさがしていたので、柾と桃が手伝おうとしますが…。
11素朴な疑問
 ('79年21号)
桃はもみじが秋に赤くなるのを不思議に思っています。南雲は仮装競争で与作をやるはめになりますが、桃の視線が気になる理由について考えてしまいます。
12明日こそは…
 ('79年23号)
店長に言われて大学をやめようか考える柾。この1年をなつかしく振り返る桃は、迷子を見つけて新宿まで連れて行きます。店長は2人の様子を観察して…。

昭和ミニコラム

牛丼チェーン店:明治になって牛肉食が解禁されると、やがて牛丼が発明されます。明治32 (1899) 年に東京日本橋の魚市場に開店した「牛めし屋」は人気を博し、大正15 (1926) 年に関東大震災のため魚市場とともに築地に移転して「吉野屋」を名乗りました。昭和33 (1958) 年に吉野屋は株式会社となり、昭和48 (1973) 年にフランチャイズ第1号店を神奈川県小田原市に開店し、日本最初の牛丼チェーン店となりました。安くて、肉が多くてうまいので、'70年代後半まで急激に事業を拡大しましたが、業績が悪化して昭和55 (1980) 年に会社更生法手続きを申請しました。昭和58 (1983) 年に更生が認可され、セゾングループが資本参加して再スタートし、平成13 (2001) 年には国内外出店1000店舗を突破するまでになりました。


七生ちゃん先生がんばって! 花とゆめ1980年春の大増刊号、
別冊花とゆめ'80年夏の号〜'81年冬の号、全4回
コミックス未収録

北斗七生
 季刊誌に連載された読み切り4作で、こやの先生の最後の作品となりました。

 第1話では、東南中学の男子中学生、杉並かおるから見た教生の北斗七生 (ななみ) 先生が描かれます。ドジでとてつもない方向音痴ですが、それなりにしっかりした考えを持つ七生先生にかおるは少しずつ魅かれていきます。年下の異性から見ているせいか、見た目は子どもっぽいのに大人の色気が感じられる七生です。

 続編では一転して、教職を目指す大学生の七生を主人公に話が進みます。ドジなのはあいかわらずですが、年下の異性からという視点がなくなったせいか、他のこやの作品のヒロインと同じような感じであまり色気は感じられなくなりました (一応大学生ですが、高校生、中学生といっても通用する感じです。もっとも第2話は高校生の頃の七生の思い出話ですが)。

 最終話では年上の従姉の結婚に悩む姿が描かれ、教員試験に受かった自分も含めて、人それぞれに新しい出発の時が来たことに思いをめぐらす七生でした。

サブタイトル内容紹介
七生ちゃん先生がんばって!
 (花とゆめ'80年春の大増刊号)
教生の七生はドジで学校と自宅とをまっすぐ通えないほどの方向音痴。しかし七生の話す国語教育の意義を聞いて中学生のかおるは七生を見直します。
日々草の咲いた日
 (別冊花とゆめ'80年夏の号)
5年前、七生はいとこの太郎が父親の死をきっかけに植物学者になる夢を捨て教師になったことを聞いて同情します。しかし太郎から本当の気持ちを聞いて…。
落ち葉ふる日の大決戦
 (別冊花とゆめ'80年秋の号)
教員採用試験のために日々勉強する七生を友人たちがしょっちゅうかまいに来ます。それを見て、同じ教師志望のちづるが七生の友人にきつく忠告します。
それぞれの出発
 (別冊花とゆめ'81年冬の号)
いとこでキャリアウーマンの美佐がプロポーズされましたが、当の美佐はやけに結婚に反発します。七生が美佐の気持ちを聞いているとその相手がやって来て…。


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(仮想) こやのかずこ選集 [文庫本版] 原画コレクション 未発表作品

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