こやのかずこ作品解説

(花とゆめ時代 [前期]:1974〜'78年)

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(仮想) こやのかずこ選集 [文庫本版] 原画コレクション 未発表作品

食べなきゃソン!! 花とゆめ1974年6月号〜'75年18号、全24回
花とゆめコミックス「食べなきゃソン!!」全3巻

大文字五美
 こやの先生初の連載作品 (4回分コミックス未収録の話があります:'75年8〜12号)。

 大文字五美は7人兄妹の長女、小学生。両親は屋台のおでん屋を経営し、母親は銭湯「あいらぶ湯」のおかみさんの姉です。父親の夢は自分の飛行機を持つことと、長男の一馬におでん屋をつがすこと。一方の一馬はカメラマンになるのが夢で、大学の写真学科にこっそり通っています。

 子だくさんだが明るい家族で毎日が大騒ぎですが、五美は同級生の須藤くんに気があって、見栄をはってみたり、恋敵と確執をくり返したり…。一馬も写真家の娘の葉子と仲良くなって、葉子も家に出入りするようになります。しかしそのうちに一馬のカメラマン志望が父親にばれてさあ大変!父親と一馬の夢はかなうのでしょうか…?

 最初は読み切り連載的に独立したエピソードが続きますが、一馬と葉子さんの話が盛り上がってストーリーの連続性が形作られていきます。

 それにしても最終回最後の五美の (20年後の) 姿は、結局誰とどうなったのでしょうか?想像をかき立てます (もう30年たちましたが)。

サブタイトル
(掲載号/コミックス)
内容紹介
だんこたちあがる
 ('74年6月号/1巻)
大文字家の朝はいつもトイレの前で行列。五美は女子優先を訴えます。そんな中、長男の一馬は、大学の写真学科に行くことを決意します。
とーさんのゆめ
 ('74年7月号/1巻)
五美には自分の部屋がありません。それに対し五美があこがれる同級生の須藤くんは大邸宅に住んでいて、五美は劣等感を抱きます。そんな五美に父が夢を語ります。
小さな思いやり
 ('74年8月号/1巻)
須藤くんは飛行機を買うために五美の父のおでん屋でアルバイトを始めます。父の飛行機を買うためだと思った五美たちもそれぞれアルバイトを始めますが…。
戦友来る
 ('74年9月号/1巻)
父の戦友の金田さんが来ましたが、もと先生でわがままを言う五美にきびしく当たります。しかし酔っぱらって一馬たちの野球の試合に乱入し…。
ポケ
 ('74年10月号/1巻)
一馬の後からおどおどした少女がついてきました。自分のことをポケという少女は全然笑わないので、五美たちは何とか笑わせようと努力します。
黄色いリボン
 ('74年11月号/1巻)
学園祭の準備中に五美のクラスで礼子が捨てた汚れたリボンをさとるが拾います。翌日家から指輪を無断で持ち出した礼子が、指輪がないことに気づき騒ぎ始めると…。
六助とサンタクロース
 ('74年12月号/2巻)
サンタクロースを信じる六助に見知らぬおじさんがサンタクロースを呼ぶ方法を教えます。言われた通りにみんなの大事なものを枕元に集めたその夜に…。
毛糸のパンツ
 ('75年1月号/2巻)
毛糸のパンツを礼子に見られ、須藤くんにまで笑われる五美。さらに須藤くんが発明屋と作った新しい屋台を父が他人に譲ってしまい、五美は泣き出します。
五美のお年玉
 ('75年1号/2巻)
五美のお年玉を自分がもらったと勘違いした老婆が飴を買って子どもたちに配りました。喜ぶ老婆に飴の礼を言う五美を、須藤くんが暖かく見守ります。
10〜
11
バレンタインデー
 ('75年2・3〜4号/2巻)
須藤くんへのチョコレートを買うためにアルバイトに奔走する五美は、須藤くんとの約束をすっぽかして風邪をひかせてしまいます。
12〜
13
葉子さん登場
 ('75年5〜6号/2巻)
一馬は恋人の葉子のことを両親に隠していますが、葉子に出会った六助が「ばーのまだむ?」と聞いたため、葉子は怒って一馬をぶってしまいます。
14お花見
 ('75年7号/3巻)
葉子や須藤くんたちを引き連れて大勢でくり出す大文字家のお花見。騒動は尽きませんが、母は子どもたちの成長に気づかされます。
15〜
16
(五美ゆうかいされる)*
 ('75年8〜9号/未収録)
下校時に見知らぬ青年がじっと五美を見つめていました。…五美たちがかくれんぼをして遊んだ日の夕方、五美が家に帰らず大騒ぎになります。
17〜
18
(五美にプロポーズ!?)*
('75年10・11〜12号/未収録)
心やさしい五美を見て、同級生の成瀬くんがプロポーズしてきました。驚いた五美ですが、からかわれたと思ってしかえしのつもりで承諾すると…。
19〜
21
おでんとカメラ
 ('75年13〜15号/3巻)
おでん屋をつがせたい一馬がカメラマン志望だということを知った父は、やけになって商売に出ます。ところが車にはねられて…。
22〜
24
とうさん飛んだ!!
 ('75年16〜18号/3巻)
ブラジルへ行くという夢を実現させようとする葉子の父。葉子は悩んだ末、一馬と別れてブラジルへ行くことを決意しますが…。
*註:コミックス未収録の回のサブタイトルはありませんので適当につけています。

昭和ミニコラム

屋台:物を売る台に屋根を付けたもので、組立て、収納、移動が可能な店舗のこと。日本では18世紀 (江戸時代) にそば、すしなどの屋台が出現し広まっていった。現在の屋台は昭和20 (1945) 年の太平洋戦争敗戦後に闇市などで始められたものが直接の起源だが、不衛生や道路の不法占拠などの理由で食品衛生法 [昭和23 (1948) 年1月]、消防法 [昭和23 (1948) 年8月]、道路法 [昭和27 (1952) 年12月]、道路交通法 [昭和35 (1960) 年12月] などの法律で規制され、昭和39 (1964) 年の東京オリンピックを契機に激減した。現在屋台を営業するには、食品衛生法に基づく保健所の営業許可や道路交通法に基づく警察署の道路使用許可が必要で (出店場所、路線は許可申請時に指定される)、定期的に更新しなければならないが、地域によっては無許可で営業している屋台も少なくない。食品は客に渡す直前に火を通すもの (ラーメン、おでんが主流) でなければならず、生ものは販売できない。現在の屋台には人力で引く屋台と改造軽トラックがあり、後者が増えているが陸運局の認可が必要。


いただきま〜す!! 花とゆめ1975年22号〜'76年15号、全18回
花とゆめコミックス「いただきま〜す!!」全3巻

藤沢みのり
 下町のおしるこ屋「よだれ屋」を舞台に繰り広げられるホームコメディ。

 大学生の上杉圭太郎は父親が学生時代に通ったというよだれ屋にむりやり連れてこられますが、よだれ屋の看板娘の藤沢みのり (高校生) に心を奪われて、ついには店の裏のぼろぼろの下宿屋「学徒館」に引っ越してきます。

 下町の住人と交流するうちに、みのりの出生の秘密を知ってしまう圭太郎。そしてその秘密はみのりの姉の琴絵の隠された過去とも関係しており、みのりに知られまいとする両親や下町の住人たち、琴絵に知られまいとする友人大石のどたばた騒ぎが琴絵の誤解や巧 (みのりの弟) と圭太郎の勘違いを引き起こして収拾がつかない方向へと進んでいきます。

 一方みのりは、高校の先輩の柴山に淡い想いを抱いていますが、その先輩の家庭の事情を知って動揺しているうちに、やがて自分の出生の秘密にも勘づいてしまいます。しかし最後には先輩との別離を経て、周囲のみんなの暖かい気持ちにあらためて気づくのでした。

 主人公だった圭太郎が後半で一時舞台から姿を消し、その間に話がどんどんややこしくなっていくので、読んでいる方はどうなるものかとはらはらしますが、最後にほろりとさせられて終わります。

 それにしても、みのりの生まれた年が昭和34 (1959) 年だったり (2004年で45歳!)、「ちかれたび〜」という昔はやったギャグのだじゃれが出たりするところに時代を感じます。

 「食べなきゃソン!!」ではまだ別冊マーガレット時代の画風を引きずっていましたが、「いただきま〜す!!」では既に後半期の画風が確立されています。

サブタイトル
(掲載号/コミックス)
内容紹介
あまから横町
 ('75年22号/1巻)
圭太郎は父の思い出のおしるこ屋に無理矢理連れてこられます。ごねる圭太郎を見たみのりが圭太郎におしるこを差し出しますが…。
あの娘はメニュー
 ('75年23号/1巻)
借りたかさを返しに来た圭太郎は、下町の色々な住人と出会います。やがてみのりの弟の巧から、みのりに片思いの相手がいることを聞いた圭太郎は…。
おしるこパーティ
 ('75年24号/1巻)
いたずらっ子の信長に、みのりの片思いの相手 (新聞部の先輩の柴山) をやっつけるかわりにクリスマスツリーを作ってくれと頼まれる圭太郎。そのツリーとは…。
月日はめぐる年の瀬
 ('76年1号/1巻)
両親がグアム旅行に行って下宿で年を越すことになる圭太郎。熱が出てふらついている時に、みのりについての妙な話を耳にします。
みのりの秘密
 ('76年2号/1巻)
お正月をみのりの家で迎えた圭太郎。みのりの晴れ着姿に見とれながら、酒の席で近所のさぶちゃんからみのりの秘密を聞き出してしまいます。
雪のふる日は暖かい
 ('76年3号/2巻)
秘密を知った圭太郎に作り話だととりつくろう下町の人たち。その暖かさに心動かされる圭太郎。そんな時、みのりが新聞部でスキー旅行に行くと言い出します。
スキー騒動
 ('76年4号/2巻)
みのりのスキー旅行に反対する圭太郎たち。ところがなりゆきで圭太郎がついていくことになります。民宿でみのりの先輩の柴山は、誰かに何度も電話をかけます。
スキー場には来たけれど
 ('76年5号/2巻)
スキーが上達せず、雪合戦を始めてしまう圭太郎。そこで柴山の電話の相手が彼の母だということが分かり、やけになる圭太郎。やがて柴山の家から電話がかかってきて…。
おかあちゃん…
 ('76年6号/2巻)
柴山が先に帰ったので、意気消沈してスキー旅行から帰ってきたみのり。借りた手袋を返しに柴山の家へ行きますが、そこで柴山の母に会ってしまいます。
10ももちゃん登場
 ('76年7号/2巻)
下町のもと住人のももちゃんが色っぽくなって帰ってきました。娘のミナの相手をさせられた大石は、開店祝いの席でみのりと琴絵の秘密を知ってしまい…。
11琴絵と大石
 ('76年8号/2巻)
ミナが秘密をしゃべらないようにももちゃんのスナックに入りびたる大石に追い返される琴絵。やけになって化粧してほかの男とつきあい始めますが…。
12琴絵もらった!
 ('76年9号/2巻)
琴絵の本当の気持ちをみのりから聞いた大石は姿を消します。みのりは心配しますが、やがてはげ頭のおやじが琴絵を訪ねてきます…。
13琴絵を幸せにします
 ('76年10号/3巻)
琴絵と婚約した大石は、琴絵を連れて昔死んだ源さんのお墓の掃除に行きます。そこでみのりの出生の秘密について話しているのを巧が聞いてしまって…。
14巧の誤解
 ('76年11号/3巻)
婚約したのがみのりだと勘違いする圭太郎。一方、みのりは柴山の卒業祝いに浮かれていますが、家から迎えが来て柴山は帰ってしまい、みのりは意気消沈します。
151枚の写真が……
 ('76年12号/3巻)
自分が不倫の子と勘違いした巧は圭太郎に「おにいさん」と詰め寄ります。一方琴絵のへその緒をさがすよう言われたみのりは、1枚の赤ちゃんの写真を見つけます。
16みのりの不信
 ('76年13号/3巻)
写真を気にしているみのりのへその緒が見つからないため、近所の住人たちが奔走します。ようやくみのり本人のへその緒が見つかりますが…。
17秘密を知った日
 ('76年14号/3巻)
みのりは大石からとうとう自分の出生の秘密と、本当の父の死の理由を聞いてしまいます。動揺するみのりに柴山が引っ越しすることを告げに来ます。
18−みんなが君を
 思っている−
 ('76年15号/3巻)
みんなが自分の秘密を知っていることに気づくみのり。去って行く柴山。大石はみのりに秘密を話したことをみんなに告白しようとしますが、圭太郎がそれをさえぎって…。

昭和ミニコラム

ちかれたび〜:昭和50 (1975) 年に放映された中外製薬、新グロモントのCMで、農作業をするおじさんの会話 (秋田県花輪地方の方言で) 「今日はちかれたなー」、「ああ、ちかれたびー」から、当時の流行語となりました。

 ちなみに「いただきま〜す!!」の中では、マンション1階の3軒のテナントの左側が「BAR地下」、右側が「パチンコBEE」で、大家がまん中の店の名を「れた」にしなければならないと主張し、子連れの未亡人のももちゃんが「スナックれた」を開店するというエピソードが綴られています。

 後年本作を読み返した時に、「れた」という店名は変だけど「Letter」にすればそれほど変ではないのでは、と思いましたが?


四つの愛の物語 花とゆめ1976年16号〜22号、全4回
花とゆめコミックス「四つの愛の物語」
 4つの独立したエピソードの連作で、花とゆめ本誌に隔号連載されました。親子愛などさまざまな愛の形をシリアスに描いた作品です。

 今までのホームコメディの中でも悲しいエピソードや寂しいエピソードが出てきましたが、それを前面に押し出した作品群です。人はみな、悲しいけどどうしようもないことがあることを経験しつつ成長していきます。そのことを作品に反映させるこやの先生は、だからこそ単なるギャグではない深みのあるコメディを描けるのでしょう。

サブタイトル (掲載号)内容紹介
わたしのサミュエラ
 ('76年16号)
妻を亡くしてから娘の愛しかたが分からない父親と男っぽく育った娘サミュエラの物語。想いがすれ違う時期が続きますが、サミュエラの結婚に際して改めて互いの愛に気づきます。
章子の旅*
 ('76年18号)
大好きな姉が婚約したことがショックで、思わず一人旅に出てしまう章子。その旅を通して章子の心が成長します。
あなただけ…
 ('76年20号)
真理の前へフランス人の少年ルシャール (ルウ) が現れます。ルウは彼を置いて日本へ帰っていった母のことをずっと想い続けていたのでした。その母とは…。
れんげ広場の仲間たち
 ('76年22号)
子どもたちが遊び集うれんげ広場という原っぱで、ちひろが出会う3人のエピソードが綴られます。1人目はガキ大将の信太。イタズラッ子で女の子をよく泣かせますが、彼にも家庭の事情がありました。2人目は中学3年生なのにちひろたちと遊びたがるみち子。しかしある日かけおちしていきます。3人目は高男。体が弱くちひろが遊び相手をさせられますが、れんげ広場に連れ出して…。れんげ広場はいろいろな悲しみをも見つめています。
*花とゆめ17号の次号予告では「天涯孤独になってしまった章子は、卒業して就職のため上京します。そして、優しい恋人ができ、生活にも仕事にも充実した毎日を過ごすのですが、ある日突然、恋人を喪ってしまう!またも一人ぼっちになってしまった章子は、新しい旅への模索をはじめる…!!」と記されていました。


あいらぶ湯 旧シリーズ:別冊マーガレット 1973年12月号、'74年3月号、11月号、全3回
新シリーズ:花とゆめ1976年24号〜'78年2号、全14回
花とゆめコミックス「あいらぶ湯傑作選」

山辺 愛 (旧)

山部 (辺) 愛 (新)
 銭湯「あいらぶ湯」の娘の愛 (中学生) を主人公とするホームコメディ。最初は別冊マーガレットで発表され、好評を博して続編が作られました。第3作の「秋の日のあいらぶ湯」のページ脇には、嘘かまことか「再開して」という投書が5万通編集部に寄せられたとか。そのせいか、後年花とゆめでリメーク版が発表されました。

 あいらぶ湯は下町の社交場。兄の恋次はライバル銭湯の「大黒屋」の娘の雪絵とつきあっています。発明屋 (食べなきゃソン!!でもおなじみ) は毎回珍発明を持ち込み、いつも大騒動。そんな中で愛は高校のラグビー部の西村周太郎にあこがれます。鈍感な周太郎に愛の想いは届くのでしょうか?

 2シリーズに渡って発表された作品だけに、「あいらぶ湯」はこやの先生の代表的なキーワードです。新旧のシリーズで登場人物の名前や設定はほとんど同じですが (なぜか姓と年齢が微妙に違います)、絵柄が違うので見比べてみるのも一興でしょう。

 髪が黒いのは共通していますが、旧シリーズ第1作では目が大きい上に体型がすらりとしています。新シリーズでは「いただきま〜す!!」のみのりの髪を黒くしたような感じです (旧シリーズ第3作では新シリーズに近くなっています)。

 ただし新シリーズも、読み切りのエピソードの隔号連載という形で発表されます。別冊マーガレットは基本的に読み切り作品ばかりで (例外的に美内すずえ先生が連載していました)、そこで育ったこやの先生は「いただきま〜す!!」のようにストーリーが連続するものよりも読み切り作品の方がむいていたのかも知れません。

 なお、参考までに、東京都の銭湯料金は旧シリーズの頃の1973年で55円、'74年で75円、新シリーズの頃の'76年で120円、'77年で140円、'78年で155円でした (毎年上がっていました)。2003年で400円です。東京都以外の地方では300円代が多いようです。

サブタイトル
(掲載号/コミックス)
内容紹介
♥別冊マーガレット時代 (旧シリーズ)
ただいま55円
 ('73年12月号/未収録)
愛は番台にすわるのが恥ずかしいのですが、子どもたちのためにあいらぶ湯でクリスマスパーティを開くことを計画します。ところがその前日、ボイラーが破裂して…。
あいらぶ湯に春がきた
 ('74年3月号/未収録)
あいらぶ湯に偏屈なじいさんが通ってきますが、実は恋次の恋人の、大黒湯の雪絵の祖父でした。一方、愛は周太郎が卒業するのでもう会えなくなると気を落としています。
秋の日のあいらぶ湯
 ('74年11月号/未収録)
愛の後輩の五郎が愛と周太郎の仲を妨害します。しかも周太郎の情報を探るため自らラグビー部に入部しますが、徐々に周太郎のよさに気づき…
♥花とゆめ時代 (新シリーズ)
湯かげんいかが?
 ('76年24号/収録)
番台にすわるのが平気な愛ですが、ある日星城高校のラグビー部がやってきます。雑用をする新入部員 (実は2年生) の周太郎の笑顔を見て、愛はひと目惚れしてしまいます。
ポカポカ雪の日
 ('77年1号/未収録)
番台にすわるのが恥ずかしくてたまらない愛はボイラー係をかってでますが、わかしすぎて熱湯に。泣く愛を見て周太郎たちが雪を入れて冷ますことを考えます。
ゆげの中から…
 ('77年3号/収録)
小さないたずらっ子、まさるがあいらぶ湯にやってきました。無理矢理つかまえて洗う愛の母になつくまさる。やがて愛たちはまさるの家の事情を知ります。
アイラブユウの
 ひとりごと
 ('77年5号/収録)
発明屋が作った全自動の屋外銭湯が、愛の母の体重に耐えきれず爆発してしまいます。半裸になった姿を周太郎に見られた愛は、星城高校進学をいやがるようになります。
春うらら…
 ('77年7号/収録)
高校に入学した愛は、ラグビー部のマネージャーの勝ち気な美人、村上女史が周太郎になれなれしいのを見て動揺します。部員は村上女史をおそれていますが、愛は村上女史に気に入られ…。
お湯の中の
 キューピット
 ('77年9号/未収録)
周太郎の名前をいつも呼び捨てにする村上女史に嫉妬を感じる愛ですが、ただの幼なじみと知って安心。ところが周太郎には恋人がいると聞かされて愛は動揺します。
あじさい色の手紙
 ('77年12号/未収録)
愛の家へ兄の恋次の恋人だと言って同じ大学の園子が訪ねてきます。しかし恋次が好きなのは大黒湯の雪絵でした。一途な園子に恋次は本当のことを言い出せませんが…。
陽ざしのなかで…
 ('77年14号/未収録)
ラグビー部が校内合宿をすることになり、マネージャーの村上女史と愛も参加します。ところが村上女史が強制する規律がきびしすぎて、とうとう部員と衝突してしまいます。
ちょっと寛寿郎
 ('77年16号/収録)
あいらぶ湯の壁の塗り替えに体の大きな寛寿郎デイビス (ハーフ) と発明屋が名乗り出ます。寛寿郎は仕事は遅いのですが、母親への思いを聞かされて愛は感動します。
10残暑お見舞い
 申し上げます
 ('77年18号/収録)
試合に負けて意気消沈する愛たち、プールに行きたい子どもたち、海へ行けずに気落ちするおばあちゃん。彼らのために発明屋が空き地に人工の海を作りますが…。
11おじいちゃまとデイト
 ('77年20号/未収録)
父方の祖父が馬に乗ってやって来ました。実は愛の父は祖父の反対を押し切って母と結婚したのでした。緊張した愛はそそうをして祖父に一喝され…。
12プロポーズされたの?
 ('77年22号/未収録)
小学1年生の友則はいつも気負ってあいらぶ湯に来ています。実はきびしい母親にしかられないように無理をしていたのでした。ところが愛の家の花ビンを割ってしまって…。
13初雪ふんわり…
 ('77年24号/未収録)
あこがれていた義理のおばが再婚して気を落としている周太郎。愛は何とかしてなぐさめたいと料理をがんばりますが、失敗してばかり。結局愛は最後に…。
14お元気で…
 ('78年2号/未収録)
卒業するキャプテンに愛を告白する村上女史。愛の思いは周太郎にはなかなか伝えられませんが、せめてもとあいらぶ湯で送別会を開くことを計画します。

昭和ミニコラム

銭湯:町中の有料の公衆浴場で、男湯と女湯に別れ、中で番台に料金を払い、脱衣所の奥に広い洗い場と湯舟がある。銭湯は鎌倉時代から記録があるが、江戸時代に発達し慶長年間の末 (17世紀初頭) には江戸中に銭湯があった (当時は混浴)。当初は蒸し風呂で、下半身のみを湯に浸していたが、同じく慶長年間の末頃に肩まで湯につかるすえ風呂 (水風呂) も現れた。混浴は明治23 (1890) 年に法令で取り締まられ、男女別浴となる。昭和2 (1927) 年にカラン (水道の蛇口) が取り入れられ、現在の銭湯の形式になった。家に内風呂が常設されるようになるとともに客が減少し、入浴料金は高くなるが [昭和47 (1972)年頃まで微増傾向だったのが、昭和48 (1973) 年から今日まで急騰し続いている]、閉鎖される銭湯も増えた。現在ではサウナ、電気風呂など色々な風呂を設けて娯楽施設として生き残ろうとする銭湯も多い。なお大人の入浴料は、地方自治体により異なるが、東京都では大正10 (1921) 〜昭和12 (1937) 年頃は6銭、昭和20 (1945) 年に20銭だったが、戦後は通貨の単位が円のみになり、昭和23 (1948) 年が10円でその後徐々に値上がりし、昭和38 (1963) 年に20円台を突破 (23円)、昭和42 (1967) 年に32円、昭和46 (1971) 年に40円、昭和48 (1973) 年に55円、昭和49 (1974) 年に75円、昭和50 (1975) 年に100円となった。200円台を突破したのは昭和56 (1981) 年で (220円)、昭和の最後の年の昭和63 (1988) 年が280円、平成元 (1989) 年が295円だった。平成2 (1990) 年の310円から毎年10円ずつ値上がりし、平成12 (2000) 年に400円となった。他の地方自治体では少々安く設定されている。洗髪料は昭和44年まで5円徴集されていたが、昭和45 (1970) 年以降は廃止された。


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