丸戸史明氏シナリオ作品攻略

Last Update 2015/10/29  戻る

 丸戸史明氏がシナリオを書かれた「この青空に約束を−」や「パルフェ」というPCゲームにはまったため、シナリオライターである丸戸史明氏 (経歴等不明) の他の作品も少しやり込んでみました。下に丸戸史明氏が主としてシナリオを担当された作品をあげておきます。

◎丸戸史明 (with 企画屋) シナリオ担当作品
 タイトル発売日ブランド名原画家攻略
01Ripple〜ブルーシールへようこそっ〜2002/04/05戯画ねこにゃん、酒月ほまれ、
みけおう
攻略
02ショコラ〜maid cafe“curio”〜
 〃 (ドリームキャスト版)
 〃 Re-order
 〃 (PS2版)
 〃 Standard Edition (非18禁)
2003/04/04
2003/12/26
2004/12/23
2005/06/30
2007/01/26
戯画
Alchemist
戯画
Alchemist
TGL
ねこにゃん攻略
未定
攻略
未定
未定
03FOLKLORE JAM2003/10/24HERMIT厘京太朗攻略
04V.G. NEO 2003/12/19戯画(酒月ほまれ)
みずのまこと、高苗京鈴
攻略
05ままらぶ2004/10/29HERMITヤマ♥びっこ攻略
06パルフェ〜Chocolat second brew〜
 〃 Re-order

 〃 (PS2版)
 〃 Standard Edition (非18禁)
 〃 (PSV版)
2005/03/25
2005/12/22
2006/06/29
2007/06/29
2015/02/26
戯画
戯画
Alchemist
TGL
TGL
ねこにゃん攻略
攻略
攻略
未定
未定
07この青空に約束を−
 〃 (PS2版)
 〃 (PSP版)
 〃 (PSV版)
2006/03/31
2007/05/31
2009/06/25
2015/12/17
戯画
Alchemist
TGL
TGL
ねこにゃん攻略
未定
未定
未定
08フォセット -Cafe au Le Ciel Bleu-2006/12/22戯画ねこにゃん未定
09世界でいちばんNG (だめ) な恋♥
 〃 (PSP版)
2007/11/22
2011/07/28
HERMIT
BOOST ON
みこしまつり攻略
未定
10WHITE ALBUM 2〜introductory chapter〜
 〃 (PS3版)
 〃 (PSV版)
2010/03/26
2012/12/20
2013/11/28
Leaf
アクアプラス
アクアプラス
なかむらたけし未定
未定
未定
11WHITE ALBUM 2〜closing chapter〜
 〃 (PS3版)
 〃 (PSV版)
2011/12/22
2012/12/20
2013/11/28
Leaf
アクアプラス
アクアプラス
なかむらたけし未定
未定
未定
12WHITE ALBUM2 ミニアフターストーリー2014/12/24アクアプラスなかむらたけし未定
13太陽の子未定CollaborationSねこにゃん、白猫参謀、
有葉
未定
「フォセット」は「ショコラ」、「パルフェ」、「この青空に約束を−」を合わせたファンディスク。シナリオライ
ター多数。PSP版「この青空に約束を−てのひらのらくえん」には「フォセット」所収のサイドストーリーも収録。
「太陽の子」はタカヒロ、るーすぼーいとの共同シナリオ。




Ripple
奈海/あおい
1.Ripple 〜ブルーシールへようこそっ〜 <↑リストへ戻る>

 「Ripple 〜ブルーシールへようこそっ〜」は、丸戸史明氏の名前が最初に表に出た作品でしょうか。海岸の一大リゾート施設「ブルーシール」の研修生となった主人公が研修中に知り合ったヒロインと親密になるというストーリーですが、デフォルメキャラが登場する仕事パートが大部分で、ストーリー部分は少なめです。とにかく目当てのヒロインといっしょにいるようにすればよいので攻略は簡単ですが、個別ストーリーが短く (感じられ)、エッチシーンも1回か2回しかありません。しかし各ヒロインにはそれぞれ秘められた過去や事情があり、短いストーリーながら後の「パルフェ」や「この青空に約束を−」に見られるシナリオ展開の手法の萌芽が見受けられます。

 ヒロインを分類すると、看板娘的表ヒロインが奈海で、より感動的なストーリー展開となる真ヒロインが主人公と過去に深いつながりがあるあおいでしょうか (丸戸作品の表/裏/真ヒロインについては「パルフェ」の項を参照)。一見クールなあおいは内に熱い想いを秘めていて、「ショコラ」の香奈子や「パルフェ」の里伽子のプロトタイプと言えるでしょう。その他は脇ヒロインとなりますが、主人公の幼馴染は奈海以外にもうひとりいます。

 「Ripple」に関連して、「この青空に約束を−」では「Ripple」をパロッている部分があり、例えばヒロインのあおいが主人公たちの目をそらせた隙に自分のおかずの「鰤の照焼」を主人公の皿に移すという場面は、「この青空に約束を−」の宮穂編の「忍ぶ恋ですもの…?」イベントとほぼ同じですし、沙衣里編の「つぐみ寮を守る会」イベントの中でさえちゃんが南栄生島のリゾート開発のことを「ブルーシールを作る」と言っています (さえちゃんが学生時代に行ったテーマパークが「ブルーシール」だそうです。南栄生島のリゾート開発は林中不動産が計画していますが、作中で「ブルーシール」はライバル会社の登録商標だと航が言及しています)。また、航が林中不動産の坂田の会社名を探る電話で「川上建設のサカタさん」と相手にかまをかける場面がありますが、ブルーシールの親会社は「Ripple」の中では川上リゾート (商事) となっています。幼馴染のヒロインが、ひとりと見せかけて実はふたりいたというのも似たシチュエーションです (ネタバレ?)。

 「Ripple 〜ブルーシールへようこそっ〜」攻略フローチャート



ショコラ
美里
2.ショコラ 〜 maid cafe“curio”〜 <↑リストへ戻る>

 「ショコラ」はもともと「Ripple」の続編として企画があったそうですが、アンティーク喫茶+メイド喫茶を舞台にすることになって、今の形になったそうです。舞台自体は後述する「パルフェ」と同様ですが、ゲームシステムは「Ripple」風です。つまり、仕事先を選択してゲームを進めていきますが、選択してもイベントが特に起こらないことが少なくありません。ストーリーとイベントにつじつまのあわないところも散見されます。しかし主人公と真ヒロインの隠された過去が少しずつ見えてくるところは「パルフェ」と同じで、感動的な結末に通じるこの巧みな伏線の張り方が丸戸氏の名を高めることになったようです (ただし完成度は「パルフェ」に及びません)。

 なお、「ショコラ」の看板娘的表ヒロインは新人メイドの美里、心により強い想いを秘めている裏ヒロインは以前から親友づきあいをしてきた翠、そして感動的なストーリー展開となる真ヒロインは主人公との過去に事情がある香奈子で、香奈子のTrue Endには簡単に到達できないよう工夫がしてあります。「Ripple」の真ヒロインのあおいで注目を集めた丸戸氏は「ショコラ」の真ヒロイン香奈子で人気を高め、後述する「パルフェ」の真ヒロインで人気を不動にしたようです。

 ところで「ショコラ」の主人公、結城大介の義妹になるのが「すず」で、あだ名が「リンリン」。これを聞いて大介が「結城 (勇気) のすず (鈴) がリンリンリ〜ン」とアンパンマンの歌を歌う場面がありますが、このだじゃれが言いたくて妹の名を「すず」にしたのではないかと勘ぐってしまいます。

 「ショコラ 〜 maid cafe“curio”〜 Re-order」攻略フローチャート



FOLKLORE JAM
ひなた/維月/古都
3.FOLKLORE JAM <↑リストへ戻る>

 「FOLKLORE JAM」は、幼馴染に無理矢理引き込まれたオカルト研究会で、様々な怪異現象に出会うという話で (最近はやりの「鈴宮ハルヒの憂鬱」と設定が似ている)、第○話とは明示されませんが、全6話の連ドラ形式で、各話の間にエンディングとオープニングのムービーが入ります (スタッフロールは最後のみ)。主人公の行動を選択して4人のヒロインのひとりと恋仲になるというオーソドックスな展開で、裏・真ヒロインのような存在は特にいません。

 丸戸氏のシナリオは、テンポが良く言葉遊びを盛り込んだしゃれたテキストに定評がありますが、その傾向がこの作品では他の作品よりも強く出ているように思われます (特に前半。後半は大きな謎解きのため、言葉遊び的要素はあまり出なくなります)。口論のような妙な会話をしていると思ったら、実は言葉遊びゲームだったとか。特にカウントダウンもしくはカウントアップが効果的に要所で使われており、緊張感をあおっています (実はそれが最後の謎だったりします)。主人公とメイン・ヒロインの名字が百瀬と八乙女で、あわせて百八 (煩悩の数?) なのも意味があるかも。ただし途中にある調査パートは (RPGのように色々な人に聞き込みをしたりしますが) ちょっと面倒で (特に2回目以降)、できればはずしてほしかったと思います。

 「FOLKLORE JAM」は、オカルトものである点と、絵柄が他の作品と違う点で、人によっては違和感を覚えるも知れませんが、私は問題なく楽しめました。ただし、ヒロインのひとりの古都があまりお嬢様に見えないところがちょっと気になりました。

 「FOLKLORE JAM」攻略フローチャート



V.G. NEO
優香/優
4.V.G. NEO <↑リストへ戻る>

 「V.G. NEO」はこの手のゲームにしては珍しく、主人公はヒロインでもある女性です。ヴィーナス・ゲームズ (V.G.) と命名されたファミレス・ウェイトレス格闘大会 (優勝賞金は10億円、負ければ公衆の面前で陵辱) に参加するはめとなったヒロイン優が強敵を次々と倒していくという少年マンガ的ストーリー展開です。

 もともとV.G.とは、PC-98シリーズや古いTVゲーム機 (PC-Engine、スーパーファミコンなど) 用に販売された格闘ゲームとして1990年代に登場したもので、10周年記念としてヒロイン総入れ替えで製作されたノベルタイプ・アドベンチャー・ゲームが本作のNEOです (旧主人公は優香、本作にも登場)。アドベンチャー・ゲームと言っても特定のヒロインを選択してゆくわけではなく、ただストーリーを追うだけのものですが (Bad Endはあります)、連ドラ形式で次回予告があり、毎回の格闘が盛り上がるようになっています。全ストーリーをひととおり見終わると、裏ルートが選択できるようになります。裏ルートは優の兄が主人公で、全体のストーリーは同じですが表ルートでは語られることのなかった裏事情を知ることができます。ただし途中の選択肢の選び方で表ルートと同じエンディングになります。

 なお、「V.G. NEO」ではエッチ・シーンはすべてムービーになっています。ゲームをインストールして作成されたVGNEOフォルダー内の、さらにMovie2フォルダー内に拡張子「.dat」のファイルがありますが、実はいずれもMpegファイルなので、Windows Media Playerなどでファイルを指定して開くとムービーを見ることができます。

 「V.G. NEO」攻略フローチャート



ままらぶ
涼子/小雪
5.ままらぶ <↑リストへ戻る>

 「ままらぶ」は母親代わりの女性の涼子と既に恋仲になっているというところから始まる型破りなストーリー展開ですが、涼子との愛を貫くか、ひたむきな想いの小雪 (涼子の娘) に転ぶかというのがこのゲームの骨子でしょう。

 他の3人の脇ヒロインはストーリーが短かめになっていますし、やや非日常的な展開でもあります。

 Bad Endになると、涼子との愛は成就せず、小雪が望みを捨てないところで終わってしまいます。

 この作品も連ドラ形式で、毎回 (一部を除いて) オープニングとエンディングがつきます。

 画面の隅にテレビフレーム (昔のテレビ風の丸っこい枠) が付いたり、視聴者の笑い声が聞こえたりするところも、ドラマ (それも「奥様は魔女」みたいな大昔のアメリカ製ホームドラマ) を模しているのでしょうが、はっきり言ってプレイの邪魔でした。

 「ままらぶ」攻略フローチャート



パルフェ
由飛/玲愛


(PS2版) パルフェ
由飛
6.パルフェ〜 Chocolat second brew 〜 <↑リストへ戻る>

 丸戸作品では、「Ripple」や「ショコラ」の説明でも触れたように、ヒロインをいくつかのタイプに明瞭にわけることができるのが特徴です。まず、表ヒロイン。パッケージの表紙を飾る看板娘的存在です。主人公と付き合いが浅く、それなりに心に抱えるものをもっていますが、その解決はそれほど難しくはありません。脇ヒロインはちょっとだけ主人公との付き合いが長いのですが、普通の攻略ヒロインとしてのシナリオの内容です。それにくらべて裏ヒロインは、もう少し付き合いが長く、しかも隠された意外な過去のいきさつがあって、その真相は攻略する途中までわかりません。しかしもっともっと深い過去の業を抱えているのが真ヒロインです (さらにエキストラ・ヒロインが登場する作品もあります)。

 このようなヒロインの色分けはアンティークメイド喫茶を舞台とした「パルフェ」では最も明瞭に現れていて、表ヒロイン (由飛と玲愛の姉妹:攻略方法はほぼ共通) と脇ヒロイン2人に対して、裏ヒロインの業は極めて強く、真ヒロインに至っては裏ヒロインの業がからんだより深い因縁となっていて、単純には攻略できないようになっています (裏ヒロインと真ヒロインのTrueルートもほぼ同じ)。それらの業は見え隠れしながらなかなか表に出て来ませんが、特に真ヒロインの隠された謎がちりばめられた伏線から解きあかされる様は、まるでミステリーのようです (推理力のある人なら途中で気づくかも。…しかし主人公が気づかんというのは…)。ただし、真ヒロインのTrueルートが、(ゲーム内ではTrueルートと明示されるのに) 真ヒロインのNormalルートをクリアするまではBad Endで終わるというのはちょっと意地悪かも。

 「パルフェ」のシナリオは、恋愛だけでなく喫茶店の経営というビジネス成功物語的なおもしろさもありますし、舞台が喫茶店周辺に限定されているので、各登場人物の心理のひだがより味わえるように思います。

 そこで先月末に発売されたPS2移植版の「パルフェ -Chocolat Second Style-」にも手を出してみました。もともと攻略対象でないサブキャラだった瑞奈に好感をもっていたのですが、それがPS2版ではヒロインになったから、というのが購入理由です。しかし、パソコンなら夜中にこっそりできますが、うちのPS2は家族が常時いる部屋に置いてあるので、家族の冷たい視線を背に浴びながらの進行となりました。

 新シナリオでは、新ヒロインのイベント (選択肢) は基本的に重要イベントのみで、既存のシナリオの隙間にはめ込まれており、最初から順に選んでいけば芋づる式にTrue Endにたどり着けるようになっています (Normal Endはなし)。瑞奈編については、同じマンションに住んでいるので主人公といつもいっしょに帰ることになるという展開はよいのですが、玲愛のイベントと密接にからみつつも、ほとんど玲愛を無視する形でストーリーが進行しますので、本当に瑞奈べったりのシナリオとなっています。新キャラの美緒はその傾向がより強く、いずれも (PC版未経験の方は) 他のキャラを攻略してから進めた方が良いように思われます。

 特に、瑞奈編でも美緒編でも、里伽子が信じられないくらいに手を回してサポート (と言うか出しゃばり?) をするところはやり過ぎかなと思いました。また、美緒の立ち絵の黄色っぽい色使いが、他のキャラの立ち絵と色調的に合わないようにも感じられました。

 それにしてもこの2人のヒロインが加わったせいで話につじつまが合わなくなるのを避けるために、2人のルート以外でもシナリオの要所要所に修正が加えられていますので、キャラの追加というのは作り手にとっては大変な作業だなと思いました。PS2版は12歳以上が対象なので、エッチシーンが全部なくなりましたが、エッチというのも恋人の親密度の表現なので、あからさまに出さなくてもそれなりのことが合ったように匂わせた方が良いでしょうね (瑞奈編の最後で瑞奈が仁のことを「パパ」と呼んでみたように。…あくまで大人の意見ですが)。

 しかしプロローグの冒頭で恵麻が体にバスタオルをぎちぎちに巻いてシャワーを浴びていたのにはずっこけました。そんな人は普通いないでしょう?それなら肩より上だけの絵を出すとか、シャワーシーンのCGは出さないとか、もう少し自然な演出ができたように思います。

 声優もPS2版用に総入れ替えされていましたが、PC版の声も選べるようになっているため、私は最初からPC版の声優の設定で進めました。オープニング・ムービーは、電源ONで最初に出てくるのは新しく作られたもので、そこそこ良い出来でしたが、プロローグ後のオープニング・ムービーはPC版と同じものでした。エンディング (スタッフロール) はPC版とPS2版のスタッフが両方とも流れる上に、背景画が変わらないので、いやに長く感じましたね。

 さて、「パルフェ -Chocolat Second Style- カトレアセット」には玲愛のフィギュアがおまけでついています。大きくて見栄えはしますが、ちょっと組み立てづらく感じました。

 「パルフェ 〜Chocolat second brew〜 Re-order」攻略フローチャート
 「パルフェ -Chocolat Second Style- (PS2版)」攻略フローチャート



この青空に約束を−
[通常版]



この青空に約束を−
[初回特典付き]


7.この青空に約束を− <↑リストへ戻る>

 「この青空に約束を−」では、離島の学校の寄宿舎「つぐみ寮」で学園生活を送る主人公と5人のヒロインのところへひとりの少女が転校してきますが、しょっぱなから共同生活を拒否されてしまうという、北側作品の「海道」の前半部分と同じようなストーリーが展開します。しかし両者は印象がかなり違っていて、「海道」では登場人物は漁師や農家や温泉旅館の子どもで、生活臭が強く、言い方が悪いのですが「泥臭い」リアルさを感じます。一方、「この青空に約束を−」の舞台はリゾート施設と精密機械企業の支社と空港がある島で、登場人物は島の名家の息子や元華族の娘などが含まれ、田舎というわりにはけっこう洗練された印象を受けます。どちらが優れているというよりも、演出手法と好みの問題になってくるわけですが、より受けいれられやすいのは「この青空に約束を−」の方でしょうね。

 「パルフェ」の項で説明した丸戸作品に特徴的なヒロインのタイプ分け (表ヒロイン/脇ヒロイン/裏ヒロイン/真ヒロイン) はこの作品でも見られますが、表ヒロインの攻略中にひとつの謎が生じます。その謎は、脇、裏、真の全ヒロインを攻略した後でも解明されません。全ヒロイン攻略後、「約束の日」というメニューがタイトル画面に追加されてグランドエンディングを見ることができるようになりますが、それを見終わった後、タイトル画面に小さなグラフィックが現れます (各シナリオのエンディングで流れるBGM「♪さよならのかわりに」に歌もつきます)。そうなった時点でそれまではBad Endだったルートがエキストラルートに変わり、最後のエキストラ・ヒロインのストーリーが続いて、(主人公は気づきませんし、テキストでも明言されませんが) 最後の謎が明らかになるという巧みなシナリオになっています。

 ただ、「この青空に約束を−」も「パルフェ」も、イベントシートというのがシステム内にあって、攻略していくとともにゲーム中で経験した選択肢の概要が表示されるため、比較的攻略しやすいように配慮されています。

 「パルフェ」のテーマは「家族」(フランス語でファミーユ)、それもどちらかというと兄弟姉妹の絆でした。義理の姉妹の愛憎、義理の姉弟のむくわれぬ愛とそれに打ちのめされるヒロイン、実の姉へのコンプレックスが主人公の姉へのコンプレックスと重なるヒロイン、兄弟姉妹をもたないヒロインの喫茶店ファミーユへの愛着…。

 それに対して「この青空に約束を−」のテーマは「仲間」です。期日がくれば離れ離れになることが決まっている仲間。第1部ではその仲間になることを拒否するヒロインを仲間にすることに腐心し、全編を通しては仲間を結ぶ絆である学生寮を残すために、仲間が欠けることを防ぎます。プレイボーイのペンションのマスターは仲間である主人公たちの想い人 (寮生たち) には絶対に手を出しません。主人公が仲間の一人と恋に落ちることは、仲間の中に大きな波乱をもたらす危険を伴います。仲間を失わずに恋人を得ることが、このストーリーの究極の目標です。思いが破れて仲間が散ってしまった後のエキストラ・ストーリーでは、最後に新しい仲間が加わるというメッセージで終わります。

 ちなみに「この青空に約束を−」で私が特に面白かったのが脇ヒロインの女教師編のシナリオでした。別に女教師が好きというわけではないのですが、女教師と教え子との交際というのは周囲にはやはりサプライズなので、他の登場人物に発覚してしまうシーンがなんとも見ものです (北側作品の「雪桜」についての感想でも同じことを言いましたね)。「この青空に約束を−」ではエッチシーン以外のイベントもすべておまけで簡単に再生できるので、上記のシーンをセーブしていなくても回想できて大変便利です。

 「この青空に約束を−」攻略フローチャート



世界でいちばんNGな恋♥

姫緒/麻美/美都子/夏夜
9.世界でいちばんNGな恋♥ <↑リストへ戻る>

 この作品のタイトルは「歳の差カップルホームコメディADV第2弾 世界でいちばんNG (ダメ) な恋♥」です。「第2弾」というのは、2004年に同じメーカーから発売された「ままらぶ ひとつ屋根の下愛情たっぷりADV」の後継作品という意味です。「ままらぶ」は母親代わりの女性との恋愛を描いた作品でしたが、「世界でいちばんNGな恋♥」では30近い主人公と10代のメインヒロイン (美都子) の恋愛を軸にシナリオが展開していきます。

 主人公は職を失ったところを美都子の母親の穂香になぐさめられ、穂香を慕って家 (「テラスハウス陽の坂」という名前は立派なおんぼろ長屋) を訪れます。しかし穂香は失踪 (駆け落ち) しており、落ち込んだところを美都子に保護されます。主人公はひとりで長屋を切り盛りする美都子の身の上を案じ、逆に保護者になろうとして奮闘しますが、その前に次々と美女が現れて主人公を翻弄します。一時期会社の同僚となる夏夜、隣家のお嬢様姫緒、そして美都子の担任で主人公の元妻の麻美の3人で、美都子を加えた4人のヒロインは、夏夜に言わせると主人公を狙う「四天王」です。四天王最弱の夏夜、中ボスの姫緒、ラスボスの麻美を倒す (誘惑に打ち勝つ) と美都子と恋人になれるというシナリオになっています (私が主人公ならまず夏夜の誘惑にあっさり負けてしまうでしょう…)。

 この作品は「ままらぶ」と同じく連ドラ形式になっていて、各話の最初にオープニング・ムービーが入ります。この作品や「ままらぶ」は、「パルフェ」や「この青空に約束を−」とは異なる路線 (システム) の作品ですから、後者の作品群と比較して出来を云々するのは筋違いというものでしょう。

 そこで「世界でいちばんNGな恋♥」を「ままらぶ」と比較してみると、攻略フローチャートに描いたように徐々に美都子に収束するシナリオとなっていて、構造的により完成度が高くなっていると思います。夏夜が活躍する前半では主人公の就職がなかなかうまくいかず、やや痛々しい展開ですが、姫緒の秘書となった中盤から主人公はビジネスマンとしても活躍し (評価され) 始め、敵対視していた姫緒も主人公に魅かれ、美都子も自分の気持ちに気付いてきて、ストーリーから目が離せなくなってきます。それにしても丸戸氏の作品は、「パルフェ」でもそうでしたが、ビジネスものがけっこう面白く感じます。今後もこの路線で作品を作ってほしいと思います。

 シナリオの後半では麻美と美都子のいずれかを選択することになりますが、ここで麻美の秘密 (主人公と離婚した本当の理由) が明かされて、(現実の話だったら) 心情的にどちらを選ぶか本当に悩むでしょうね (…ゲームではどうせ順番に攻略していきますが)。

 「FOLKLORE JAM」などで見られた言葉遊び的要素は、それほど強くありませんがこの作品でも散見されます。最初の方では、主人公が下宿の住人たちと妙な会話をしているなと思ったら、実はマージャンをしていて、しかもDSで通信対戦していたとか。このあたりの徐々に状況を明らかにしていく手法は、さすが丸戸氏、絶妙ですね。また、シナリオ内で「FOLKLORE JAM」を思わせるゲームをしている場面もありました。

 ということで、この作品はなかなかの良作だと思います。しかし初回限定版についていたサントラCDに入っていた主題歌 (オープニング曲とエンディング曲) が、いずれもショート・バージョンだったのが残念でした (オープニング曲のショート・バージョンはメーカーサイトからダウンロードできるのに…)。

 「世界でいちばんNGな恋♥」攻略フローチャート


 1〜9の作品を実際にプレイしてみて思ったことは、丸戸史明氏のシナリオは大きく2つに分けることができるという点です。

 「Ripple」に始まり、「ショコラ」、「パルフェ」、「この青空に約束を−」に至る作品は、選択肢は基本的にヒロインのいる場所で、主人公の行為ではありません。裏ヒロイン、真ヒロインのシナリオは極めて感動的に描かれます。しかし「Ripple」や「ショコラ」の仕事パートの部分ははっきり言って無意味ですし、邪魔でもあります。特に「ショコラ」では、ヒロインの画像がついている場所を選ぶだけではそのヒロインの攻略にならず、どの場所を選択するのがベストかは試行錯誤が必要ですし、店長室の仕事を随時選択しなければならないのもゲームの流れを悪くします。それらの問題点をすべて解消して完成されたのが「パルフェ」で、このゲームのシステムには大きな不満点はひとつもありません。さらに完成度が高いのが「この青空に約束を−」で、選択肢のわかりやすさ、レイアウトなど文句のつけようがありません。ただし「この青空に約束を−」では、裏ヒロイン、真ヒロインの意外性が「パルフェ」ほどはなく、表ヒロインや他の脇ヒロインと同様の攻略方式となっていますので、完成度は極めて高いのですが、人によっては「可もなく不可もなく」といった評価になるのかも知れません。とにかく、この4作品を比較すると丸戸氏のシナリオの進化がはっきりわかります。

 その他の作品には、連ドラ形式の「FOLKLORE JAM」、「V.G. NEO」、「ままらぶ」と「世界でいちばんNGな恋♥」があります。「FOLKLORE JAM」はパラレルワールド的なシナリオ展開が見られますが、基本的にはオーソドックスな純愛ものです。「V.G. NEO」と「ままらぶ」は、共通点は多くありませんが、いずれも実験的な意欲作と言えるでしょう。

 「V.G. NEO」はTVアニメ・シリーズのような乗りで、回を追うごとにストーリーが盛り上がっていきます。特定のヒロインを選ぶのではないノベルタイプであることも特徴です。しかも表ルートと裏ルートの二重構造となっていて、裏ルートまでプレイしてようやく全体像が見えてくるという形式は、これはこれで完成されたものと言えます。ただしエッチ・シーンは (すべてムービーであるという特徴もありますが) 大半が複数の男性にヒロインが陵辱されるという内容で、こういうのが好きな人もいるのでしょうが、私はやや敬遠してしまいました (フローチャートでも、エッチシーンを回避する選択肢があります)。私が思うに、美少女ゲームのプレイヤーの多くはどちらかというと純愛指向が強いのではないでしょうか?(人気作品のラインナップを見るとそう思われてなりません) 複数の女性を同時に愛せるハーレム状態は、男のひとつの夢であるかも知れませんし、潜在的なレイプ願望もあるかも知れません。しかし大多数の指向は、特定の女性と深く愛し愛されるというところにあるように思われます。

 今、アニメやゲーム業界では「ツンデレ」という言葉が横行しているそうです (2005-2006年頃の話)。「ツンデレ」とは、普段はツンツンとつれない雰囲気なのですが、主人公といっしょになると愛情たっぷりにデレデレするような女性キャラクターのことのようで、この言葉の流行にも上記の指向が感じられます。「ショコラ」や「パルフェ」が高い評価を受けたのも、香奈子や里伽子との大きな困難を乗り越えて得られた純愛がプレイヤーに評価されたのにほかなりません。そういう意味で、「V.G. NEO」はストーリー、シナリオともに優れた作品ですが、純愛の欠如のため高い評価を受け損ねたように思われます。

 一方の「ままらぶ」は、連ドラ形式ながら主人公の行動を選択して特定のヒロインと深い関係になっていくというシナリオですが、最初から恋人がいるという設定があるため、(その後の2人の関係がどうなっていくかというところにこの作品の面白さがあるものの) その愛を貫いて当たり前、他のヒロインに気を移せば純愛ではなくなるというジレンマがあるように思います。

 以上の作品を経験しての最終的な感想ですが、やっぱり次回作が楽しみですね。プレイヤーの要望は留まるところがないかも知れませんが、また一段と進化した作品を期待しますし、丸戸氏であれば期待できるでしょう。



WHITE ALBUM 2
〜introductory
chapter〜
雪菜/かずさ

WHITE ALBUM 2
〜closing chapter〜
千晶/雪菜/かずさ
小春/麻理
10/11.WHITE ALBUM 2〜introductory chapter〜/〜closing chapter〜 <↑リストへ戻る>

 丸戸氏の久々の新作で、2部構成になっています。当初はTVゲーム機用ソフトと言われていましたが、PC用ゲームとして販売されるようで、私もプレイすることができそうです。ただし、2部構成なので様子を見てから購入します。

 前作「WHITE ALBUM (シナリオ:原田宇陀児氏)」は1998年に発売され、昨年でしたかTVアニメ化もされました。今回の作品とテーマや内容につながりがあるかどうか調べていません。

 (2012/02/03追記) introductory chapterには分岐がなく、closing chapterには攻略ヒロインが5人 (メインは雪菜とかずさの2人) いるようです。それぞれ1周目は表面的な記述だけで、2周目にキャラの心理状態の記述が追加されるようで、「V.G. NEO」タイプのシナリオ構成が採用されています。前作「WHITE ALBUM」とのストーリー上のつながりはないようです。


WHITE ALBUM 2 ミニアフターストーリー
雪菜/かずさ
12.WHITE ALBUM2 ミニアフターストーリー <↑リストへ戻る>

 非18禁のファンディスクで、中身は短いようです。アクアプラスへ応募してもらえたもので、元々市販はしてなかったためにまったく気付きませんでした。今ではプレミアがついて高額になっているようです。WHITE ALBUM 2のintroductory chapterとclosing chapterは結局時間がなく手つかずでした。名作との評判もあるようですが…。

13.太陽の子 <↑リストへ戻る>

 「車輪の国、向日葵の少女」などの作品のシナリオを担当して有名なるーすぼーい氏が企画した作品で、シナリオ:るーすぼーい×原画:有葉 (「車輪の国、向日葵の少女」などを制作したペア)、シナリオ:タカヒロ×原画:白猫参謀 (「つよきす」などを制作したペア)、シナリオ:丸戸史明×原画:ねこにゃん (「パルフェ」などを制作したペア) の3チームがそれぞれ3組の主人公とヒロインの物語を担当し、互いにストーリーが絡み合うかもしれないといった今までにない構成の作品で、期待大です。どのような作品になるのでしょうか? (→完成・発売の見込みはどうにもなさそうです)


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