西谷祥子作品メモ

Since 2016/04/25(初稿 2003/06/12)  Last Update 2023/04/17


 このページでは、昭和36 (1961) 年にデビューされ、1960年代から80年代にかけて活躍された少女マンガ史上に残るマンガ家、西谷祥子先生の作品について、コミックスのリストや調査情報を紹介しています。なお、かつて「西谷祥子ファン倶楽部」というサイトがあって、そこに詳細な作品リストや解説がありましたが、現在は存在しないようで残念です。

 西谷祥子先生の作品については、昭和41 (1966) 年に週刊マーガレットに連載された「レモンとサクランボ」を後年コミックスで読み、非常に感銘を受けました。主人公の少女の兄が石森章太郎先生をモデルにしたようなマンガ家で、主人公の友人がその漫画家のファンという設定で、主人公の兄の正体がばれた時の騒動が見物でした。なお、石森章太郎先生は (後年改名した「石ノ森章太郎」よりも当初の筆名の方が好きです)、西谷先生の師匠だったそうです。

 『'59〜'76 短編にみる魅惑のミクロコスモス 少女マンガ大全集 (文芸春秋編、1988年) 』の「作家の横顔」欄には、西谷祥子先生について下記のように紹介されています。

西谷祥子 石ノ森章太郎が主催した「墨汁二滴」の同人として、マンガの世界に足を踏み入れる。が、高校を卒業後は、美容師の免許を取ってから、マンガ家として上京した堅実派。小粋な主人公が飛び跳ねる、明るいタッチのラブコメディ『マリイ・ルウ』 (1965年)、学園生活のあれこれを描く『レモンとサクランボ』 (1966年) や『学生たちの道』 (1967年) などで、長く、少女マンガをリードしてきた。高知県出身。

「今は、どうしてあんなに描きたかったんだろうと思うくらい、もう仕事してました、月三百枚以上。ひどい時は、お風呂なんか一ヶ月入らなかったり。週刊誌の連載を二本してそれをヒットさせ、月刊誌で自分の好きなものを作るという具合。そうしたら、ある日、税務署のおじさんがきて、追徴金五百万円だと。家が一軒買える金額で、今にすれば二千万ぐらいです。税金のことなんか、まるっきり知らなくて慌てました」
 彼女は現在、世の中が求めているものがわからない、と休筆中。主婦業のかたわら、カルチャーセンターに通う。

 コミックスに関しては、1998年から2004年にかけて「レモンとサクランボ」、「花びら日記」、「奈々子の青春」、「高円寺あたり」、「マリイ・ルウ」、「ジェシカの世界」、「学生たちの道」が再販されましたが、現在ではほとんどの作品が入手困難で、古本屋やネットオークションでさがすしかないのが残念です。以下に、自分用の備忘録としてコミックスの初版発行年、雑誌掲載年 (表題作のみ) を表にしました。

◆西谷祥子作品コミックス・リスト◆

No.書  名コミックス初版発行雑誌掲載
1マリイ・ルウマーガレットコミックス/白泉社文庫1968/20031965-66
2白ばら物語マーガレットコミックス
(白泉社文庫「マリイ・ルウ」にも収録)
19711966
3レモンとサクランボマーガレットコミックス/創美社コミックス
/白泉社文庫
1968/1998
/2004
1966
4ジルとMr. ライオンマーガレットコミックス19681966
5ジェシカの世界サンコミックス/集英社漫画文庫
/白泉社文庫
1974/1976
/2003
1967
6われら劣等生マーガレットコミックス19691967
7ギャングとお嬢さんマーガレットコミックス
/花とゆめコミックス (カバー違い2種)
1970/19751967
8学生たちの道サンコミックス、全2巻/集英社漫画文庫、全2巻
/白泉社文庫
1973/1976
/2004
1967-68
9花びら日記 セブンティーンコミックス、全3巻
/フラワーコミックス・デラックス、全1巻
1972/20021968-69
10奈々子の青春 セブンティーンコミックス、全2巻
/フラワーコミックス・デラックス、全1巻
1972/20021969
11銀色の少女たちサンコミックス19741969
12お元気ですか?セブンティーンコミックス、全4巻19731970-71
13ジュンの結婚 マーガレットコミックス19711970
14放課後あつまれ!サンコミックス19741970
15まじめに愛して!サンコミックス19741970
16飛んでゆく雲 セブンティーンコミックス/集英社漫画文庫1973/19761971
17不良先生セブンティーンコミックス、全2巻19731971
18こんにちはスザンヌマーガレットコミックス、全3巻1971-721971
19あわ雪さんマーガレットコミックス、全2巻19721972
20少女の恋マーガレットコミックス19741972
21お〜い海!サンコミックス、全2巻19751972-73
22いとこ同盟マーガレット・レインボーコミックス19761972
23麦笛の聞こえる町シップ・ポケットコミックス、全3巻19791972-73
24水の子サンコミックス、全2巻19751973
25四人姉妹サンコミックス、全2巻19761973
26オリンポスは笑うマーガレット・レインボーコミックス19761974
27北斗という名のひとオリオン・ポケットコミックス*19761974-75
28すみれ咲け咲けオリオン (シップ)・ポケットコミックス*、全4巻1976-771975-76
29今日子の恋歌マーガレット・レインボーコミックス、全2巻19771976
30とうきび畑で花とゆめコミックス19761976
31気がちがい荘の住人達花とゆめコミックス (カバー違い2種)19771977
32女が弱いなんて!!マーガレットコミックス19771977
33幸福(しあわせ)ゆきかしら?マーガレットコミックス、全3巻19781977
34サラダっ娘セブンティーンコミックス、全5巻19791977-78
35隼別王子の叛乱集英社漫画文庫19791978
36手紙をください! マーガレットコミックス、全6巻19791978
37ミルクandオレンジ集英社漫画文庫19821979
38わたしの時集英社漫画文庫19801979
39愛がありますか?マーガレットコミックス、全4巻1980-811980
40高円寺あたり集英社漫画文庫、全2巻/双葉文庫、全2巻1982/20021980-81
41日の輪月の輪マーガレットコミックス19811981
42HEY☆坊やマーガレットコミックス、 全3巻19821981
43エンジェル・ロック集英社漫画文庫19831982
44おみなえしサンコミックス・ストロベリーシリーズ19851982
45書かれなかった手紙講談社コミックス・mimi19851983
46花びし草サンコミックス・ストロベリーシリーズ19851983
1984-'94の作品はコミックス未収録。
白泉社文庫

マリイ・ルウ



レモンとサクランボ



ジェシカの世界



学生たちの道


フラワーコミックス
・デラックス

花びら日記
註*オリオン出版から発売された28「すみれ咲け咲け」の1〜3巻は当初オリオン・ポケットコミックスとして発売されたが、スタジオ・シップに社名変更後 「すみれ咲け咲け」の1〜3巻は
シップ・ポケットコミックスとして再び初版が発行されている (微妙なカバー違いの初版が2種類ある [下記参照]。4巻はシップ・ポケットコミックスのみ)。正確にはオリオン版が本当の初版。

 上表を見て思い出したのが、私が中学生の時、学校から生徒に「セブンティーン」は (中学生が読むものでないから) 読んではいけないというお達しがあったことです。そのためかえって女子生徒だけでなく男子生徒もセブンティーンを読んでいたような。学校から言われなければ、多分男子生徒はあまり読まなかったと思うのですが。


●コミックスのカバー違いについて

 西谷先生はたくさんコミックスを出されていますが、特定のコミックスで、同じ年月日に発売された初版なのにカバーが違うものがあります。

 第1は、花とゆめコミックス版の「ギャングとお嬢さん」です。この作品はもともと昭和42 (1967) 年の週刊マーガレット32〜42号に連載され、昭和45 (1970) 年にマーガレットコミックスが発売されましたが、花とゆめが昭和49 (1974) 年に創刊されてまもない昭和50 (1975) 年に花とゆめコミックスからも発売されました。下の中上図がオーソドックスなカバーですが、中下図のカバーもあります。コミックス本体はまったく同じで、なぜこの2種類があるのかは不明です。東日本版と西日本版という説もありますが、確たる証拠はありません

 この西日本版(?)のカバーに描かれている、赤いコートを着た少女と犬のイラストについては、昭和45 (1970) 年12月13日発行の週刊マーガレット50号の表紙に同じイラストを見つけました (下右図)。

 このイラストが週刊マーガレットのこの号の表紙のために書き下ろされたものなのか、他からの流用なのかわかりません (この号から西谷祥子先生の「まじめに愛して!」の連載が始まっていますが、その内容とは無関係です)。ただし、50号がクリスマスプレゼント号と題しているのに対し、このイラストの左上にオーナメント・ボールを飾ったヒイラギのクリスマス・リースらしきものが描かれていますので、書き下ろしの表紙の可能性が高そうです。赤いコートもサンタクロースの色ですしね。

左:マーガレットコミックス、中上下:花とゆめコミックス・カバー違い2種、右:週マ1970年50号表紙

 第2は、同じく花とゆめコミックスの「気がちがい荘の住人達」です。昭和52 (1977) 年の花とゆめ4号に掲載された表題作ほかで、同じように2種類のカバーがあります (下の左上図がオーソドックスなカバー)。ところでマイナー版の左下図のカバーの原画はデラックスマーガレット'71年秋の号の表紙裏に載っているイラストーリー「秋」のイラスト (下の右図) だということがわかりました。

 このイラストーリー「秋」の絵と詩はいずれも西谷祥子先生によるものですが、「気がちがい荘の住人達」とは何の関係もありません。

左上下:花とゆめコミックス・カバー違い2種、右:デラマ1971年秋の号裏表紙


 



 
 第3は、上記の「すみれ咲け咲け」の1〜3巻です。この作品は週刊少女コミックの'75年26号から'76年14号まで連載された作品ですが、昭和51 (1976) 年からオリオンポケットコミックスとして出版されました。背表紙の一番下に「オリオンポケットコミックス」と記されています。

 この版元のオリオン出版というのは、高名な劇画原作者、小池一夫氏が昭和47 (1972) 年に設立したスタジオ・シップが昭和48 (1973) 年8月に社名変更したもので、昭和51 (1976) 年に出版された「北斗という名のひと」と「すみれ咲け咲け」1〜3巻の初版は「オリオンポケットコミックス」となっています。ところが1977年2月頃に再びスタジオ・シップに社名が戻り、背表紙下に「シップポケットコミックス」と印刷されたカバーの初版が再度出版されました (イラストは同じ)。

 そういうわけで市場にはこの2種類のカバーが出回っています (4巻は'77年発行、「麦笛の聞こえる町」は'79年発行なのでシップポケットコミックス版のみ)。ですから、正確にはオリオン版が本当の初版と言えるでしょうが、シップ版でそろえたいという人もいるようです。

 なお、重版でカバーが変わっているものはよくあります。例えばセブンティーン・コミックスは下図のようにピンクカバーと呼ばれる新カバーに変わっています。「ピンクカバー」の名前の由来は背表紙の色からです。


「お元気ですか?」第1巻初版 (左) と11版 (右)


●作品リスト

以前、「西谷祥子ファン倶楽部」に掲載されていた西谷祥子作品リストを参照して、コミックス収録作品以外を含めた作品リストを再現してみました。

サイトはこちら

問題あれば削除しますので、
管理人までご連絡をお願いします。

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