川原 泉作品一覧

Since 2016/04/26(初稿 2003/03/25)  Last Update 2017/10/12


 このページでは川原 泉先生の少女マンガの話を書きます。この方もけっこう人気のある有名なマンガ家で、聖ミカエル学園というお嬢様学校を舞台にした 笑う大天使 (ミカエル) が代表作と言われます。私も大分前にこの作品を読んで、それ以来他の作品も読みたいと思い続けてきてなかなか機会がなかったのですが、最近ガラスの仮面の白泉社文庫を買った際に、彼女の作品も並んでいるのに気づき、これを契機にと買い始めました。

 短編、長編、いずれもほのぼのとした味わいのある作品群ですが、長編のストーリーものとしては、個人的にはメイプル戦記がお気に入りです。プロ野球マンガなのですが、ストーリーの展開もエピソード群もうまくまとめられていて、作者の力量が分かります。

 彼女の作品にはぼ〜っとした登場人物(特に主役)が多いのが特徴で、自分 (たち) を「わし」とか「わしら」とか言うヒロインがまた味があってよろしいですね。一時期は「花とゆめ」で人気1位、2位くらいだったそうです。

 ところが、川原 泉作品を年代順にまとめた下表を見ても分かるように、作者は1988年以降から休載が目立つようになり (特に「バビロンまで何マイル?」と「メイプル戦記」)、平成になってからはどちらかというと寡作ぎみになりました (1985年頃に上京したのに1994年頃に鹿児島へ帰郷したのもその辺りと関係あり?)。それでも2003年からは通称「○○がある」シリーズを雑誌メロディに発表され、人気を博しています。

No.題  名初出/連載掲載誌長さ白泉社文庫書名
1ジュリエット白書1983花とゆめ別短編 フロイト1/2
2メロウ・イエロー・バナナムーン1983花とゆめ別短編 
3たじろぎの因数分解1983花とゆめ短編 
4悪魔を知る者1983花とゆめ別短編 
5真実のツベルクリン反応1983花とゆめ短編 
6花にうずもれて1983花とゆめ短編 
7空の食欲魔人1984花とゆめ短編I空の食欲魔人
8進駐軍 (G・H・Q) に言うからねっ!1984花とゆめ短編 
93月革命1984花とゆめ短編II
10脈絡のない風景1984コミケートエッセイ (なし)
11月夜のドレス1984花とゆめ短編I空の食欲魔人
12甲子園の空に笑え!1984花とゆめ中編IV甲子園の空に笑え!
13カレーの王子さま1984花とゆめ短編III空の食欲魔人
14アップル・ジャック1984花とゆめ短編 
15不思議なマリナー1985花とゆめ短編II
16ミソ・スープは哲学する1985花とゆめ短編IV
17ゲートボール殺人事件1985花とゆめ中編 甲子園の空に笑え!
18アンドロイドは
ミスティー・ブルーの夢を見るか?
1985花とゆめ別短編IV空の食欲魔人
19Intolerance
―あるいは暮林助教授の逆説
1985花とゆめ中編III中国の壷
20パセリを摘みに1985花とゆめ短編II美貌の果実
21銀のロマンティック わはは1986花とゆめ中編III甲子園の空に笑え!
22架空の森1986花とゆめ短編II美貌の果実
23愚者の楽園1986花とゆめ短編II
24大地の貴族1986花とゆめ短編III
25美貌の果実1986花とゆめ短編I
26 笑う大天使 (ミカエル)1987花とゆめ長編V 笑う大天使1
27森には真理が落ちている1988花とゆめ短編I美貌の果実
28空色の革命1988花とゆめ中編IV笑う大天使2
29オペラ座の怪人1988花とゆめ中編II
30夢だっていいじゃない1988花とゆめ中編I
31フロイト1/21989花とゆめ中編Iフロイト1/2
32川原のしあわせ1989花とゆめ別エッセイ 中国の壷
33追憶は春雨じゃ1989花とゆめエッセイ 
34かぼちゃ計画1989花とゆめ短編 
35中国の壷1989花とゆめ中編 
36殿様は空のお城に住んでいる1990花とゆめ中編IV
37バビロンまで何マイル?1990-91花とゆめ長編 バビロンまで何マイル?
380の行進1991花曜日エッセイ 小人たちが騒ぐので
39メイプル戦記1991-95花とゆめ長編 メイプル戦記1
40カ−ラ君を探せ1992コミックスクイズ メイプル戦記2
41ヴァンデミエール―葡萄月の反動1994花とゆめ中編II
42アンジェリーク学概論1996PUTAOエッセイ 小人たちが騒ぐので
43もぎゅもぎゅ調査隊1996PUTAOエッセイ 
44通販けもの道1997PUTAOエッセイ 
45ロレンツォのカエル1997SERIE短編 
46小人たちが騒ぐので1997-98PUTAOエッセイ集 
47トレジャーハンターK1998PUTAOエッセイ 
48ブレーメンII1998-04PUTAO
メロディ
長編 ブレーメンII1
49レナード現象には理由がある2003メロディ短編 (ジェッツコミックス
レナード現象には理由がある」)
50ドングリにもほどがある2003-04メロディ中編 
51あの子の背中に羽がある2004-05メロディ中編 
52真面目な人には裏がある2005-06メロディ中編 
53笑う大天使 特別編2006メロディ短編II(花とゆめコミックス
傑作集 ワタシの川原泉 II」)
54その理屈には無理がある2006メロディ短編 (ジェッツコミックス
コメットさんにも華がある」)
55その科白には嘘がある2006-07メロディ中編 
56グレシャムには罠がある2007メロディ中編 
57コメットさんにも華がある2007-11メロディ中編 
58COCOMじゃないし2008紀文サイトエッセイI(花とゆめコミックス
傑作集 ワタシの川原泉 I」)
59バーナム効果であるあるがある2011-12メロディ長編 (ヤングアニマルコミックス
バーナム効果であるあるがある」)
60アルマジロにも意地がある2012メロディ中編  
61これから私は武士になる2012-メロディ長編 (ヤングアニマルコミックス
バーナム効果であるあるがある」)
(以下、続巻)
62スペシャル描き下ろし
「白の衝撃 ぷく〜〜〜」
「黒の深淵 ぐぎゃあ〜〜〜」
2017コミックスエッセイ (ヤングアニマルコミックス
バーナム効果であるあるがある」)
63特別書き下ろしマンガ!
(カーラ教授が今、夢中なのは…!?)
2017ダ・ヴィンチエッセイ  
傑は花とゆめコミックス「傑作集 ワタシの川原泉」の巻数。
白泉社文庫

笑う大天使1



バビロンまで
何マイル?



メイプル戦記1



ブレーメンII1


ジェッツコミックス

レナード現象には
理由がある



コメットさんにも
華がある

 ここで別は別冊、長編は文庫本 (コミックス) 丸1冊以上の長さのもの、中編は数回の連載もの、短編は読み切り、エッセイは周辺雑記・体験記のようなマンガをさします (分類は多少いい加減)。あまり詳しくないので表からもれている作品もあるかも知れませんが、きちんとした作品一覧が見当たらないのでとりあえず。文章ものや作品中の言葉を抜き書きしてまとめた「本日のお言葉」などは省いてあります。

 これらの作品を年代順に読んでみるのも一興です。例えば、 笑う大天使 (ミカエル) の舞台となる聖ミカエル学園は、作品No.15、21、24、28、29、30、39でも出てきますが (28-30はエピローグ〜後日談)、15では聖ミカエル学園のキーワード「大天使」にアーチ・エンジェルと誤ったルビをふり、21以降でアーク・エンジェルと言い換えて、26の 笑う大天使 (ミカエル) の冒頭で間違えたことの言い訳をしています (文庫に入れる際に15をなおせば良かったのに…)。

 銀行家の箱入り娘、桜井敦子嬢は、30、31、39でお見合いをしますが、まとまりません (いつもなぜか引き立て役)。36は時代劇ですが、舞台となる秋吉田藩の殿様と鈴姫は26、28、29、30、39に出てくる和音さんのご先祖です。

 また、13は11の続編、14、15、16、18は11、13と同じ「食欲魔人」シリーズ (16で11、14、15の主役がそろいます)、39は12と、48は18と主人公が同じ、23〜25は内容は異なるが連作もの、と新旧の作品を合わせ読むといっそう楽しめます。とにかく、今後もいっそう活躍してほしい作家です。

 2004年にはメロディ9月号増刊「まるごと川原 泉」第1号が出ました!内容は「笑う大天使」第1部ほかで、白泉社文庫版で何度も読んだものばかり。この雑誌の別冊ふろくには「レナード現象には理由がある」と「ドングリにもほどがある」が掲載されていました。某県下の有名進学校「彰英高校」を舞台にしたお話で、成績は優秀でない一風変わった女子生徒 (ずばり「脱力系」!) によって優秀な男子生徒が癒されるというような内容です。川原 泉先生のこの頃の絵柄は、十年前と少し変わりましたが (長期連載していた「ブレーメンII」あたりからスクリーントーンを多用しだしたことが特徴といえるでしょうか。特に目の描き方が変わりましたね!)。この2作では、あいかわらず恋愛の要素は希薄ですが、ストーリー自体は往年の川原節の健在をうかがわせました。


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